雪蟷螂(紅玉いづき)読了 [感想・小説]
紅玉いづき、1年ぶりの新刊は、「人喰い」最後の物語。
もっとも、前2作と繋がった物語ではなく、「人を喰らう」という衝動が共通する物語。
長きにわたり戦争を続けていた山岳の少数部族、フェルビエ族とミルデ族。
その戦いに終止符は打たれた。
ふたつの部族の長の婚礼により、和平を結ぶはずだった。
アルテシアが美しい。
そしてそのまっすぐな様子がかわいらしい。
ルイとのやりとりは微笑ましい。
しかしこの物語の感想をどういったものか。
夢中になって一気に読んだ。
「面白かった」とただ一言で表現し得るものではない。
また、読み終わったあとにピンナップのイラストを見たとき、ぞっとした。
これこそが、「雪蟷螂」の情であるのかと。
恐怖ではない。
あまりに見事に物語とリンクした、その美しさに呑まれた。
今回のイラストはいつになく効果的だったと思う。
あの見開きの手はただ手だけであるがゆえに胸に迫るものがあった。
アルテシアは確かに存在感も格別で美しかったけれど、ロージアの物語と言っても差し支えないだろう。
なぜなら彼女は「雪蟷螂」の体現だからだ。
その生き様は鮮烈で、苛烈なものだった。
息苦しくなるほどの恋だった。
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