改造版 少年アリス(長野まゆみ)読了 [感想・小説]
とりあえず長野まゆみデビュー作であるところの「少年アリス」のことは忘れるんだ。
話はそれからだ。
セルフカバーというか、作者自らあの名作を作り直したのがこの「改造版」です。
これはもう本当に「改造」であり、加筆修正とかいうレベルではないように感じました。
違いは数あれども、これはもう対比ではなく別個のものとして扱うべきだ。
そうは思っても、学生時代を長野まゆみで過ごしたといっても過言ではない初期長野まゆみフリークの私としては切り離して考えることなどできるはずもなく。
あのデビュー作を読まずにこの改造版を読んでいたら、ただ単純に面白い小説だと思っただろう。
ただし、あの当時のような熱狂的なファンにはならなかっただろうなあ。
アリだとは思う。
でも旧ファンとしては何かが足りない。
旧かな遣いの文体がなくなった、とかそういう問題以前の何かが。
あと、正直「少年アリス辞典」は蛇足だったかな、と。
聞き慣れない単語も長野まゆみの不思議ワールドのひとつだと思います。
それで興味をもったら自分で調べたらいい。
確かに便利だけども、なんというか、せめてこういう普通の辞典ではなくて。
まして「架空の生物」なんて注釈はしてほしくなかった。
「今」、長野まゆみを読み始めてみたいと思っているひとには最適な一冊だと思います。
そしてずっと遡って読んでいって、最後に「少年アリス」に到達するのはひとつの理想かもしれない。
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